没後100年 菱田春草展 ─新たなる日本画への挑戦─(長野県信濃美術館) [美術展感想]
行こうかどうか悩んだけど、長野まで足を延ばして行ってきました!
展覧会は一期一会だから、情報知った時点で行かないと巡回するかどうかわかってないのはもう一生みることは出来ないかもしれないからなー!
信濃美術館は隣の東山魁夷美術館と隣接接続してます。
入場券購入時に共通入場券が買えます。
(ので、今回は共通入場券にしました。)
この美術館来るのは久しぶりで、前回いつ来たのか覚えてません。
かなり年数の経った感じの建物です。
作品は年代順に並べられてました。
1899年以降かなりの早さで作品を制作しており36歳で夭折しましたが、今回の展覧会では結構な数の作品が展示されました。
菱田春草といえば朦朧体の描法を開発した人のひとりですが、今回は初期の作品から順に追っていくことによってどのように確立していったのかというのを垣間見ることができます。
初期作品は忠実なる日本画ですね。
その中でも「海老にさざえ」はその写実性と海老とさざえの鮮やかさが印象に残る作品です。
さざえって地味に見えるけど、貝の表面に藻などがついていて彩りがありました。
「五郎時致」は武士を描いたものなのですが、あまり見ない感じの構図でした。
今回メインのひとつ「水鏡」ですが、一人の女性が水辺にたたずんでいて画面の1/3はその女性が映り込んでいる水辺という絵です。
菱田春草は細密な描写がうまいと思うのですが、この女性でも細部の布の質感、宝飾品の描き込みなどがしっかりしています。
また、ここでは朦朧体の技法が如実に出ています。
特に水に映り込んだ女性は線がほんとない描写で幻想的な表現がなされてました。
そしてなにより全体的な構図がいいですね。
まだここでは朦朧体というものについて試行錯誤していたようです。
「月下狐」は狐が可愛いです。
ススキの中で月を見上げている感じなのですが、春草独特の柔らかいタッチがススキと狐の描写に使われて秋の野なのにさびしい感じがしません。
「薊に鳩図」でも鳩の動きと背後のアザミの配置が縦長の掛け軸の構図にぴったりとはまってます。
「瀑布(流動)」などは朦朧体の特性を最大に生かした作品だと思います。
水しぶきがすでに霧状になりながら流れている滝。
それ自体は水の表現と相成り朦朧としているのですが、周辺に飛ぶ紅葉が滝の勢いも表現しています。
それでいながら滝壺を超えた水面は穏やかな水の表情と、水のあらゆる状態を描き切っているように思います。
そして今回のメインその2「羅浮仙」
これも元になる物語がある作品だそうな!
現世離れした存在がその描き込みと彩色により表現されてます。
ふんわりした画面なのに描き込みと小物を配置した構図にて安定感も出しています。
個人的には羅浮仙よりも水鏡の方が好きですね。
(でも後ろの梅の配置や岩などは絶妙の構図だと思います)
「月下波」は波の表現が秀逸ですね。
波と月を主題にしていながら渡り鳥の飛翔がアクセントとなっている。
画面何処を見ても素敵なのだが、やっぱり波に目を引きつけられる作品です。
「栗ニ雀之図」
やっぱりこの方の動物はかわいいですね。
ちまっとした雀に栗の木の配置がシンプルながら好きです。
「黒猫」
これは有名な方の黒猫ではない方です。
あっちは気の幹にちまっと座ってますが、こちらは地面にふにゃっと立ってます。
なんとなくネコが弱い感じ(いろんな意味で)がしますが、黒のもっさりした毛並みやあのくりっとした明るい瞳は同じ感じです。
木のすぐ下に立っているのでなんとなく所在なさげな感じがするのは気のせいでしょうが。
タイトル別の感想はここで終わります。
全体的には水、雨などが画面に入っている作品は好きなものが多かったです。
(「雨(山路)」や「帰漁」などは雨が降っている時の独特の薄暗さと、そこにいる人間のちょっとした寂しさみたいなのが表現されていて好きです)
そしてなぜか砧を扱った作品も多くて、今回の作品紹介のところで砧の意味を知りました。
(今まではというと砧=公園の名前という感じでした(笑))
これもなぜか女性が野っぱらで一人砧を打っているというさびしげな絵が多かったですね。
今回作品数も結構あったのですが、意外にさっぱりというかあんまり描き込んだりしてないような作品が多かったように思います。
個人的には描き込んだ作品の方が好きですね。
もう時間が経っての感想書きは辛いというのを実感した。
まあまたやっちゃうのだろうけど。
美術館本体についての感想を少々。
年数が経っているというのは冒頭に書きましたが、それゆえ照明がいまいちなんですよ!
作品によっては映り込みが激しくて・・・・。
前2つ行った美術館が新しくて設備がいいだけに気になってしまいましたね。
あと第一室の上には子供用の遊具が置いてあるスペースがあるのですが、これがすごい音がする!!
見ているこっちとしてはうるさくてしょうがない!
一周した後そのスペースがある近くに行ったら、うるさくなりますがご協力下さい。みたいなこと書いてありました。
多分子どもも一緒に楽しめるように、もしくは子どもにも楽しめる美術館にするための企画なのだと思うのですが、本来一番楽しまなければいけない人が不愉快になる企画は本末転倒だと思うのですが・・・。
でもあんまり人がいないので、もしうるさいと感じた方はしばらくしたら静かになってるかもしれないので、第一室を後回しにするのがおすすめです。
東山魁夷美術館にも行ってきたのでちょこっと感想。
今回は本作品ではなく習作やスケッチがメインの展覧会でした。
(シーズンごとに展示作品が変わる美術館です)
「白馬の森」が本制作ではあり、私がよく知っている東山魁夷作品という感じでした。
この白馬シリーズ嫌いではないのだけど、個人的はあんまりくるものが少ない作品なんですよね!!
「夕静寂」は本作品でも大きなもので、今回の展示物ではこれが一番気に入りました。
その題名のとおりに静寂を思わせる青に、一筋の流れる滝!
山というか森の構成が同じ色調ながら、単純な組み合わせにならず画面の変化がとてもいいです。
その他スケッチ、下図なども同時に公開してありましたのでそれらと比べながら見ることができました。
その他下図などだけがあり、本作を見てみたい作品もありました。
スケッチ等は長野の古民家などを描いた普通のものなんですが、自然物の印象が強い東山魁夷なので、当たり前なのですがスケッチなのにかなりの完成度でちょっとびっくりしました。
あと最後のビデオ上映室に飾ってあったタペストリーが東山魁夷が描いた絵を元につくられらのですが、これ私が国立近代美術館で見て気にいった作品でした。
(多分「秋山」風な題名だったとおもう)
単純な構図なのだけど、迫力がある山でまた秋のにぎわいが感じられるのが好きでした。
ざっとこんな感じで感想終わります。
菱田春草はまた展覧会があったらいきたいなー。
ではこれにて失礼!
没後100年 菱田春草展 ─新たなる日本画への挑戦─
基本情報
会期2011年9月10日(土) - 2011年10月16日(日)
休館日毎週水曜日
開館時間9:00~17:00(入館は16:30まで)
会場長野県信濃美術館 第1・2・小展示室
観覧料大人1,200(1,100)円、大学生1,000(900)円、高校生以下無料
※( )は20名以上の団体料金
東山魁夷館との共通料金=大人1,500円、大学生1,100円、高校生以下無料
※「菱田春草没後百年記念特別展」(飯田市美術博物館9/3-10/2開催)の半券をご提示いただくと、団体料金でご覧いただけます。
主催長野県、長野県信濃美術館、信濃毎日新聞社
共催長野県教育委員会
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