北斗七星の庭_展重森三玲1896-1975(ワタリウム美術館) [美術展感想]
今回は庭の展覧会です。
庭なんて展示出来ないものをどうやって展覧会にしてるのかを観に行ってきました。
重森三玲は近代の作庭家としては一番有名な方になるのかな?
作庭家として残した作品の数も多いが、既存の庭を並みならぬスピードで多数を調査しまとめた方でもあります。
展示室は3階に分かれていて、実物大の再現された庭もあったのですが基本はパネル展示と庭を映した映像展示になります。
最初の階には代表作である、東福寺の北斗七星の庭と小市松の庭の実大展示がありました。
両方とも実物大と言いながら展示してある場所が狭いので、庭を味わうというよりも配置の雰囲気を味わうという感じでした。
北斗七星の庭は枯山水なのでいいのですが、小市松の庭の苔は少し元気がありませんでした。
小市松といいながら結構四角形がイメージしていたのよりも大きかったです。
八相の庭はさすがに長石を置くことはできないので、実物大パネルを壁に貼っていたのですが、ちょっと違和感のある展示でした。
その他は小河邸の天袋に使われいる引き戸(襖?)の展示や、掛け軸なども数点ありました。
邸宅によっては庭だけなく室内装飾もトータルデザインしていたようです。
波をイメージしたという天袋のデザインがよかったです。
次の階は重森さんが使用した日用品や、出版した書籍、また茶にも精通してたのでその際使用した道具や制作したものが飾ってありました。
書も何点かあったのですが、私はよくわからないのなんとも言えないのですが原形をとどめてない「月」の字が好きでした(笑)
あとここに全国各地の庭を調査したという図面があったのですが、これがすごく綺麗!
描いたのは重森さんではなく、共同で調査に参加していた方の制作でした。
カラス口で精密に描かれていたあの図面はある意味芸術といってもいいのではないでしょうか。
CADではこの味わいは絶対出せないものだと思います。
私は今回の展示物の中ではこの図面が一番気に入りました。
次の階はTVでの映像展示と、プロジェクターを使って3種類の映像を壁面に映しだしていました。
トータルで今回の展示物を見て、重森三玲さんの気になった作品について少し書きます。
東福寺の3つの庭はどれもいいですね。
古典に習いながら、古典に縛られない作品を作るという重森さんの言を実現したものだと思います。
小市松の庭は、市松模様という古典的な模様でありながらそれがだんだん薄れていく様は現代的なデザイン性を感じますし、北斗七星の庭もただの枯山水におさまらず、有機的な曲線と植物の併用で落ち着きながら安らげる庭になっていると思います。
八相の庭はもう作者の想像性の産物としか言いようがありません。
すでにそこに形としてある石をその石があるべき場所に置く。
それは確かに人間の作ったものなのですが、それ以上の物を感じますし、一般にいう物を作るという行為以上のものだと思います。
あのような形をどうしたら組み合わせられるのか、私はわかりません。
漢陽寺庭園は豊富な水を庭に引き込み、その水を使っていくつもの庭を作ってます。
自然にある小川の雰囲気で、夏場だと涼がとれそうな感じの庭です。
また門前には巨石を使った枯山水があるのですが、これまたすごく安定してみられる石の組み方となっていながらその存在感を感じるものでした。
松尾大社庭園では曲水の庭では石を敷きつめることで作られた小川がかわいらしく流れ行く様を、蓬莱の庭は満々と水がたたえられている川とも池ともつかない水の流れをと、水を使いながらも対照的な庭になってました。
また上古の庭には石とともに笹が生い茂り、すでに人間が作ったものではないような、すでに昔からそこに石達があったような雰囲気をだしてます。
友琳の庭はモダンですね。
水と渡り廊下の配置が好きです。
ざっくりと書きましたが、展示作品はこのほか20庭以上あるので見応えはあると思います。
とってももっさりとした庭も作っているのですが、私はシンプルな感じの庭の方が好きです。
さて展示物の感想に戻るのですが、展示方法としてはパネルは文字がほとんどで、映像は流すだけという感じでちょっともの足りなかったですね。
こうもっと庭というものを展示する何かがほしかったです。
映像作品も5~30分が6本あるので見に行く方は少し時間多めに見ておいた方がいいと思います。
映像作品が厄介なのは自分の時間で見れないということですね。
それでも映像とするのなら10分以内にしてほしかったです。
内容的にも(撮影コンセプトとは違っても)被っているものが結構ありましたし!
今度は重森三玲作品の現物を見に行ってみたいです。
追記
初めて行った美術館にはその施設の感想もかいているのですが、ワタリウム美術館は初めてだったので感想書きます。
美術館自体は地下1階地上4階になります。
展示は2~4階部分で、今回はかなり特殊な区切り方していたので部屋自体はかなり狭く感じました。
これが全部解放された状態の展示スペースだとすると、小品には見やすい広さなのではとは思います。
でも1フロア自体ちょっとした教室半分ぐらいになるでしょうか?
各階へはエレベーターか階段で移動。
4階はエレベーターのみ。
階段は夜に行ったので、あまりの暗さにおっかなびっくり上がっていました。
(照明が無いのです。少しすれば目が慣れるので大丈夫なのですが!)
天井はそれほど低くはないので、圧迫感などはありません。
展示施設部分以外では1階と地下1階は物販販売と喫茶スペースになっているのですが、こちらはとても味わいのある空間になってました。
書籍の量がかなり豊富でほぼ2階分を使っての本棚や、えらく狭いのに落ち着く秘密基地みたいなところなどありました。
次は普通の展示時期に行ってみたいですね。
北斗七星の庭_展重森三玲1896-1975
ワタリウム美術館
会期 2011年12月4日(日)― 2012年3月25日(日)
11 時より19 時まで [ 毎週水曜日は21 時まで延長]
休館日: 月曜日
入場料 入場料:大人1,000円 学生800円(25歳以下)
ペア券:大人 2人 1,600円/ 学生 2人 1,200円
(期間中、何度も使えるパスポート制)
主催: ワタリウム美術館/ブルーノ・タウト展実行委員会
助成: 芸術文化振興基金
テキスト,写真 重森千青(重森庭園設計研究室代表)
展示協力 グリーン・ワイズ/三菱レイヨン株式会社/
株式会社堀内カラー/株式会社チェリア
写真協力 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/越智信男
会場デザイン 藤原徹平(建築家)
グラフィック グルーヴィジョンズ
映像制作 大房潤一(映像ディレクタ―)
会場音楽 細野晴臣(ミュージシャン )
http://www.watarium.co.jp/exhibition/1111shigemori/index2.html#ar
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